ナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき

ナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき

売れ筋ランキングナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき  
ナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき

ナショナリズムという迷宮―ラスプーチンかく語りき


価格:¥ 1,575(税込)
朝日新聞社  (2006-12)
/佐藤 優/ 魚住 昭/
単行本 253ページ
売れ筋ランキング:165098
国家と神とマルクス―「自由主義的保守主義者」かく語りき
国家の自縛
国家の崩壊
獄中記
佐藤優 国家を斬る

 佐藤さんのものを読むとやはりその知性とそれに裏付けられた見識に驚きます。対談形式の書物をたくさん出されていて、書き下ろしをじっくり読みたいのに残念ということで星ひとつ。
 堀江モン事件の整理は見事だし、小泉政権の総括もまず間違いないところでしょう。
 新市場主義がイデオロギーの過ぎないこと、理論的巧緻を凝らした数式を散りばめた現在の経済学の成果が資本の提灯持ちに過ぎないことを見通している知性は大したものだと思いますよ。
 次はいわゆる近代経済学についての書物を読みたいですね。フリードマンとかハイエクとか。
筆者の著作にはまっていたので買ってみた。筆者の経験にもとづくリアリティ、論理の明確さ、誠実なスタンスに惹かれたからだ。でも、この著作を含め、思想関連本はあまりいただけないというのが率直な感想。ある種の主体の作為や謀略を前提にした筆者の議論は面白いし迫真性があるが、思想・政策の話にはそのような面白さはなく、むしろある種の国家主義的な観点が気にかかる。

本書は社会思想・科学の入門書のような内容がほとんどで、目新しさはそれほどない。その多くは比喩とアネクドートに彩られていて(その分面白く読めるというメリットもあるのだが・・・)、リアリスティックだが実証データの裏づけも乏しい。わが国の知的風土と昨今の社会状況にマッチしているのかもしれない。

このような問題は、例えば新自由主義的な流れに対する安直な評価につながっている。小泉改革を含め新自由主義的な取り組みは、資本という限りある資源をより効率的に使うことを主眼にしているのであって、人間を個に還元することを狙いとしているわけではない。それに、今日の一見新自由主義のせいに見える問題をどこかの国の謀略や役人の作為に帰するのは無理がある。

新自由主義的な取り組みがなかったらもっと状況は悪くなっていた可能性があるが、ナショナリズムの色彩を帯びた感情的な評価のみが一人歩きしているのが、昨今の状況。このように新自由主義の影響について実証的に確立された評価が存在しないなかで、筆者はマスコミによく見られる論調を吟味もせずに安易に話を進めていく。それにともなって、対抗軸として国家やナショナリズムがメインディッシュとして料理されるという仕組み。なお、この筆者の著作の多くでは、国家や国体が絶対化された神格のように屹立している印象を受ける。ある種の信仰抜きでは、すんなり受け入れられないかもしれない。


あとがきで魚住昭が紹介しているように、佐藤優の言説の活躍の場は、「正論」「世界」
「SAPIO」「週刊金曜日」「新潮45」「月刊現代」「文藝春秋」と非常に幅広い。
佐藤優による巻末の文献解題も秀逸で、対話中、佐藤優がかみ砕いて説明してくれたそれらの
文献を思わず買いあさってしまった。読んでみると、佐藤優の解説の的確さがよくわかる。
クレヨンしんちゃんと「思想」、イエスの「国家」と「貨幣」に対する戦略、ねずみ男の
バランス感覚と「原罪」思想、ブッシュと星飛雄馬の共通点、サザエさんと中世ヨーロッパ、
ホリエモンと「貨幣」、ゴジラ=「国家」と「貨幣」=東京タワー・・・次から次へと、
意外なたとえで引き込まれていきます。
封建社会の地獄絵と、そういう世界から解き放たれた、徹底した個が自立した先の地獄絵・・・
国家とはどうあるべきか、国民とは何か、民族とは何か、ナショナリズムとは何か、
自分のアタマで考えるヒントをくれたような気がします。
とは言え、やはり佐藤イズムの新しい言説を読みたくなってしまう。

異色といえばこれほど異色の経歴をもつ官僚もいないだろう。
多くの言葉を費やさなければ説明できない、
いまや言論界になくてはならない存在、佐藤優氏と
魚住昭氏の対談形式の現代社会思想分析である。

判っていたこととはいえ、佐藤氏の古今東西深い知識と
明快、かつ鮮やかな論理構成に舌を巻く。
中途半端な貌で終わっているが、この企ては続くようであり
今から続編が楽しみである。
「真性インテリが(言論の質を低下させる)ファシズムに対してほとんど無力だった」ことは歴史が証明している。
というのも、人は表象能力(想像力)と共にあるが故、「思想の間を移動することしか」できず、
「誰か第三者によって意図的になされるというだけでなく・・・自発的に(ファシズムを)作動してしまう」火種を抱えているからである。

「実際は階層間は大きく断絶している」にもかかわらず、
「社会的強者・資本家や企業の不正を"暴いて"血祭りに上げ、弱者に対して"清潔な政府"をアピール」する官僚。
「収奪する階級」である官僚にとって、「社会的弱者はバラバラで、かつ従順な労働力であってくれるのが最も都合がいい」。
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