海舟語録 (講談社学術文庫) |
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老いた幕末の大立者が気ままに語り散らす 気分爽快・気宇壮大の一冊、 という点では「氷川清話」と同じだが、 より肉声に近い編集になっている。 ただその分散漫で読みにくいかも。 ちなみに若い頃の顔写真によく似ているのが スター歌手の郷ひろみ。 というわけで、郷さまも読んでね!! 明治28年から32年、勝72才から76才で亡くなる直前まで、ジャーナリスト巌本善治氏が勝の自宅に通って直接聞き書きした談話録である。司馬の小説で度々引用されるので興味をもって読んでみた。 日清戦争など明治30年ごろの政局に関する話題と、明治維新の昔話が多いが、なんといっても明治維新の話題が大変興味深い。鳥羽伏見の戦いで徳川慶喜が大阪城を捨てて江戸に逃げ帰った日の話とか、勝と西郷の江戸城無血開城の日の話とか、維新の裏話が満載である。 江戸時代までの武士の時代と、明治以降の近代は、どういうわけか筆者のイメージの中では完全に断絶していて、どちらも同じ日本の話であるという実感が持てなかった。しかし、勝のべらんめえ調の話し言葉は今とそんなに変わらない。そのべらんめえ調で、「河上彦斎はすぐに人を斬るひどい奴だった」などと語る。 司馬の小説を読んでいても、幕末の暗殺者が横行していた時代は遥か昔のような気がしていたが、勝の談話録を読んでいると、いきなりリアルな現実として意識の中に飛び込んでくる。この感覚が新鮮でとてもおもしろかった。 勝は45歳のとき、明治維新を迎えた。ちょうど、人生の半分を江戸時代に生き、残りの半分を明治に生きた。歴史は地続きである。江戸時代と明治時代は、政治も文化も服装も建築も全く様相が違うが、しかし同じ人間がそのまま、生きていた。あたりまえだが、そのことをリアリティをもって感じることができた、というのが筆者にとって大きな収穫であった。 勝海舟は幕末期の幕府の重臣として数々の功績を残した人物であり、貧乏御家人の息子から幕末の動乱期に頭角を現して最後には軍事総裁にまで登りつめた立志伝中の人でもある。 幕府瓦解時には主戦派を抑えて江戸城無血開城を成功させ、無為の血が流れることを防いだことから今でも彼を評価する声は高い。 しかし明治の世では、彼はその江戸城無血開城の件と明治政府の高官の職に就いたことを以って裏切り者、忘恩の輩との誹りを受けていた。 福沢諭吉などは「武士としての誇りをドブに捨て地に落とした大無責任男」と公然と罵っていたほどである。 しかし彼はそんな批判に対して表題のようにうそぶいていた。 言いたい奴には言わせておけばいいという、彼らしい飄々とした答えである。 無論自らの行いの正しさに抱く自信から来た言葉でもあるのだろう。 彼は明治政府の下で海軍卿という要職に就いていたが、同時に慶喜公の赦免のために駆けずり回り、終生かつての幕臣達の生活の世話に尽くしていた。 海舟は日本という大きな枠組みでものを考えることが出来たこの時代には稀有な人物であり、坂本竜馬をはじめその薫陶を受けた人物は多い。 その言葉には激動の時代を切り開いて来た人間の持つ重みがある。 海舟語録 (講談社学術文庫)を楽天で検索 |