星と半月の海 |
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色鮮やかな表紙には、パンダ、ペンギン、小猿、恐竜、クジラ(ジンベイザメ)。 この動物たちに関わる人を主人公に据えた連作小説集です。 飼育員、古生物学者、解剖学者などの、日々こだわり、心意気などが描かれています。 出てくるパンダや恐竜のインパクトが強く、そこがまた面白い読みどころです。 が、動物と接しながら、主人公達が語る家族のこと、今の自分のルーツ、これからの自分などは、 日常に追われ普段忘れていても、誰もが確認したいことであり、この物語集のテーマに思えます。 ちょっと違った生活が見え、低刺激の良い気分転換になりました。 こうゆう小説が欲しい時がありますよね。 動物と人との関わりを描く動物小説。 ですが 川端氏のこれまでの作品同様 氏の世界観が背後を貫き流れて おとぎ話のよう・・・ ”みっともないけど本物のペンギン””パンダが町にやってくる”はストレートに読者の感情に訴えてくる作品。 ”星と半月の海”はジンベエザメの話だが 人間の中の海から 生命の海 時間を超えた宇宙という海まで拡がる感覚がある。 時間を超えた生命 という感覚は ”ティラノサウルスの名前””墓の中の生きている”も同様。 原初の生命から今の自分へと繋がる生命 というものを考えさせる。 最も印象に残ったのが ”世界樹の上から”。 各界に通じる根を持ち宇宙を貫くという世界樹。(北欧神話) その名の通り 各作品(世界)を貫き 他作品に登場する人物がこの樹の上で交差し それぞれの海(生命の源)に思いを馳せる・・・ 西オーストラリアにあるこの世界樹が 頭上に拡がる宇宙を貫くイメージが浮かんだ。 川端さんの文章は飽きる。 この言い回し、この一人称。 せっかくの面白いテーマが台無しじゃないの。 とか思って「みっともないけど本物のペンギン」から順に読み始めたのではありました。 ところが、物語が進むに連れて、ずぶずぶと沼地に足を取られるかのように、 わたしはいつの間にか生命の歴史に思いを馳せていました。 六つの連作のうち四番目の「世界樹の上から」が書き下ろしで、 この話がここに入ることで、全てがつながる印象になったのだと思います。 人間の中にも海があるのは、命をつなぐため。受精するには水(海)が必要です。 そのことを意識することが書かれています。 個人的にすきなのは「パンダが町にやってくる」。 自分の野生はどこにあるのかと思ったりしました。 欲を言えば、意地悪い棘のような引っかかりがもっともっとあったらいいのに。 もっと立ち止まって反芻して、自分でも何かを追いかけて行きたくなるような。 わがままで貪欲な読者としては、この連作を元にした長編が読みたいと思ったのでした。 清冽で、シンプルな文章の、テンポのよさに引き込まれる。 表題作は、ジンベエザメを飼育・観察する女性獣医を主人公としている。「星」と「半月」が二頭に名付けたニックネームであることが途中で分かる。「わたし(リョウコ)」は外人の研究者エルマ、リンジーとともに海中に潜って魚たちの生態を観察している。その体験・記録のようであって、心の動きと自分の人生(娘美月を産み落とす母親)まで重ねて述べられており、生命の輝きを感じさせる作品に仕立てられている。「半月」は死んでしまったが、「星」は放流する。やがて、青い海に溶け込むように消えていく。 その瞬間、星の体から無数の光の粒が弾け飛んだ気がする。わたしの内面が反転する。外へ転がり出す。娘の存在を感じる。漂う。拡散する。感情を伴わない意図せぬ涙が込み上げてくる。 このような感覚的で鋭利な内面描写を展開して、現代的フィーリングにかなう文章表現になっている。「底知れない青に揺れる」青の感覚に満ちた爽やかな作品として余情深い佳品である。 星と半月の海を楽天で検索 |