歌姫あるいは闘士 ジョセフィン・ベイカー

歌姫あるいは闘士 ジョセフィン・ベイカー

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歌姫あるいは闘士 ジョセフィン・ベイカー

歌姫あるいは闘士 ジョセフィン・ベイカー


価格:¥ 1,890(税込)
講談社  (2007-06-02)
/荒 このみ/
単行本 301ページ
売れ筋ランキング:132930
黒いヴィーナス ジョセフィン・ベイカー―狂瀾の1920年代、パリ
モダニズムとハーレム・ルネッサンス―黒人文化とアメリカ
Josephine Baker Story
孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人
オリエンタルズ―大衆文化のなかのアジア系アメリカ人

貧乏な黒人女性としてセントルイスに生まれた踊り子は、1920年代にパリにわたり、大ブレイクをする。1930年代にはまさに世界の歌姫となり、世界一金持ちの黒人女性となる文字通りのサクセスストーリーを生きる。しかし米国への凱旋帰国公演を果たすも、人種差別の壁に阻まれる。そして、人種差別撤廃の闘士としての活動を同時に行いつつ、芸能活動を続けた。そのやり方は正面きっての対決で、米国では何度も物議をかもし、CIAの要注意人物に指定されるまでにいたる。その純粋な戦いぶりには、感動すら覚える。
そして、世界中から孤児を集めた「虹の部族」を運営した。その最初の孤児が実は澤田美喜が経営していた「エリザベスサンダースホーム」から受け入れたテルオとアキオだったいう、日本との意外な縁があった。しかしその「虹の部族」も放漫経営がたたって、破産の憂き目にあう。が不死鳥のようにカムバック。そして、最後はステージの上で死ぬ。
彼女の男前の生き様に触れると勇気が湧いてくる。
 20006年が生誕100年だったジョセフィン・ベーカー(1906−75)の知的刺激に満ちた伝記である。ジョセフィン・ベーカーといっても若い世代には知られていないかもしれないが、ある年齢以上の人々にとっては伝説的な歌姫である。彼女が伝説となりえたのはなぜか、彼女の生涯が我々の心を揺さぶり続けるのはなぜか、を知りたければ本書を読めばいい。
 黒人差別の激しい1920年代にニューヨークで芸を磨いたあとパリに移り、その表現の豊かさと自然な躍動感あふれる踊りで瞬く間にスターとなり、フランス国籍もとったジョセフィンだが、30年代・40年代の帰国公演の際に受けた人種差別の屈辱をバネに50年代には公民権運動のチャンピオンとなる。50年代は「アメリカの時代」だったが、人種差別の陰湿さは桁外れでもあった。この状況に戦いを挑むジョセフィンは第五章「ある晩、ニューヨークのストーク・クラブで」に劇的に描き出されている。私がもっとも興味をもったのがこの章である。また、もっともショックを受けたのは、アメリカ時代の若いジョセフィンの「ピカニニー姿(ステレオタイプ化された黒人の女の子を滑稽化して見せたショー)」の写真だった。
 ジョセフィンは第二次世界大戦中は自由フランスのレジスタンス闘士であり、後にレジオン・ドヌール勲章を授与されている。また、レ・ミランド城で「虹の部族(世界中から集めた12人の養子)」に具現される理想の平等社会をつくろうと20年余にわたって献身したことこそ彼女の一番の誇りだったろうが、著者は世界中を回ってジョセフィンの企ての意味に迫っている。
 失敗もあったが、人間の尊厳を求めて、一生パフォーマーとして人々を魅了し、全人類の平等を求めて戦ったジョセフィン・ベーカーという人間は矢張り忘れてはならないだろう。ぜひ読んでおきたい一冊。
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