逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫)

逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫)

売れ筋ランキング逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫)  
逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫)

逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫)


価格:¥ 630(税込)
小学館  (1999-12)
/井沢 元彦/
文庫 394ページ
売れ筋ランキング:9614
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シリーズ5冊目の本書では、日本の歴史の転換点とも言える鎌倉幕府について、著者が相変わらず独自の視点で切り込んでいきます。

ここでは前4冊にあった、怨霊信仰のような明確な「テーマ」は明確に語られてないなぁ、と思っていたら、実は最後にとんでもなく重たいテーマが提示されています。それが「自然」と、「納得」です。
これこそが、個人的に日本の歴史に抱いていた疑問をすべて解いてくれました。
ルールとして決まっている事と、大多数の人が納得している事とは全く別物で、究極的には、後者の方が優先されるのが日本の歴史であると言う見方はとても鮮烈で、大いに納得しました。

3、4巻と若干中だるみの感じがしていましたが、この5巻は1巻のインパクトと同レベルです。

 第4巻半ばまでは「怨霊信仰」をテコに通説を覆し、仮説を提起し、事実関係を大胆に再構成する痛快さがあった。しかし時代が中世に近づくにつれ史料も豊富になり、研究蓄積で確定された事実関係は容易に動かし難いためだろう、主に「事実への意味づけ」の面で通説的解釈に異議を唱えるという内容に変わってきた。
 古代編では歴史駆動の根本原理と呼びたくなるほど荒れ狂った「怨霊」も、エピソード的に時折顔を覗かせる程度に大人しくなった。ま、頼朝による中尊寺金色堂の処遇、長田忠致の処刑、あるいは後の義経伝説の伝播といった問題(p161〜)は単なる挿話にあらずと、著者は言うかもしれない。しかし本巻の主題となる源氏政権形成は、公家勢力vs地方武士勢力の土地領有権闘争の構図下で描かれるのだから、怨霊話はやはりサイド・ストーリーに留まるだろう。
 ただ後半、「道理」概念の分析を通じて日本的法意識を特徴づける議論は面白かった。『沙石集』中の北条泰時のエピソードを「大岡裁き」に結びつけ、そこでの「裁き」とは「納得」の実現であり、実現に至る道筋が「道理」なのだと論じる。そこには山本七平や川島武宜が意識されていると思えるが、「日本人の理想とする裁判とは、場合によっては法を無視しても道理を重んじ、『自然な状態(=すべての人々が納得している状態)』を実現(回復)させるものなのである。だから、その背後には『和』がある」(p358)という一文は、極めて本質的な問題提起を孕むと思った。
 叙述のイカガワシサに警戒警報が鳴りっぱなしだが、それでも止められず、第6巻「中世神風編」に乱入のココロだッ!
 御成敗式目の制定につながる当時の法のありかたが現代日本に通じるのをついたところが秀逸。
 
 法令とは別のところにそれを超えた真の規範(ルール)があり、我々はその「別のところ」にあるものを尊重すべきで、そのためには法令は無視してかまわない。これが日本人の法意識である。そして、この「別のところ」にあるものとは『道理〔物事の正しい筋道。正論であること。そうである道理がわかって納得するさま。〕』である。
 
 そのとおりである。日本人は法を最善だと思ってない。『道理』二正義を見出すものだ。これで東京裁判が国際法無視の違法なものであっても、国民は結果にうなずけると言うもの。違法であっても道理があったと考えればよいのだから。世論に答えるため、罪刑法定主義が障害となり逮捕できない悪人の身辺をかぎまわり、何が何でも他の犯罪行為を見つけ逮捕する、のにもうなずける。
 頼朝が東国武士にとって崇拝すべき権威的存在(皇統の武士の棟梁)ではなく、彼らの利害を実現するためのミコシに過ぎなかった、と言う意見は若干衝撃だった。
この「逆説の日本史」シリーズは愛読しているが、面白い反面、さすがに5巻くらいになってくると、飽きてくる。著者の強い主張に「お腹いっぱい」になってくる。
私は最初のうちは新鮮みを感じて「その通りだ」とうなずきながら読み進めた。しかし、だんだん「また、これか」と思い始めてくる。
“一般の学者が見落としているのは言霊思想であり、日本史における宗教的要素である”“こういう言い方をすると、マルクス主義史観に懲りかたまった学者は……”“右の学者は……”と、とにかく他をなで切りにするのである。
著者は、このシリーズの中で繰り返し「日本の思想は和にあり」と強調しているだけに、自分のように、どうしても「和」を重んじたくなる人間には「またか」と思ってしまう。
全シリーズのうち2冊くらいをピックアップして読むか、あるいは、2冊くらい読んだら、何年か時間を空けて読むとか。そうでもしないと読むのに疲れてしまうと感じる人もいるでしょう。

この巻では今、大河ドラマで注目されている源義経の歴史的な存在意義。なぜ義経は頼朝に滅ぼされたのか。なぜ、あれほどの戦争の天才が亡んだのか。こういったところが面白かった。そのあたりの著者の見方は、今の社会で我々が生き抜くに当たっても、必要な視点を与えてくれると思う。


 権威主義、史料至上主義、呪術観の無視という従来の日本学界の常識を再検討し、日本史に新たな視点を提供する「逆説の日本史」シリーズの第5弾。本書でも著者のオリジナリティあふれる学説をもとに、明快に日本史を紐解いている。

 天皇・上皇が絶対的権威でありながらも、源頼朝を委員長、北条時政を書記長にした労働組合のような形をとることで武士が実質的な支配権を握っていったという例えは大変興味深い。しかし、その後に北条氏がただの有力御家人で終わらず、執権という役職のもとに権力を集中できたのは北条時政・義時が稀代の謀略家だったからとしているが、それにはいささか物足りない印象を受ける。さらにもう一歩踏み込んで、御家人組合の書記長に過ぎなかった北条氏がどのようにして他の有力御家人を押さえて、象徴将軍のもとに政権を握ったのかを著者に解説して欲しかったところだ。


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