春の数えかた (新潮文庫) |
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大在学中に教養講座で日高先生の講義を聴いて、面白かったので、以来のファンです。日高先生の弟子の竹内久美子さんの本も面白い。 日高先生は理系なのに文章がうまい。一般人でもすーっと読めるように書いてくれる。専門家で、やさしい言葉でわかりやすく書けるって、すごいことだと思います。 たくさんの「へえ!」が詰まっていて、さらにやさしい温かい気持ちになれる本。 その中で一番印象に残ったのは、「幻想の標語」と「エコトーン」。「自然と共生」なんてのは幻想であると。自然は、共生しているように見えても、常に競争し、戦略的に生きているモノたちの戦いの場である。人間は自然といるとホッとするけれど、その時の自然というのは原生林ではない。本当の自然は恐ろしくてホッとするどころではない。人間がホッとするのは、人間の営みと、自然の境界線、「里山」「エコトーン」なのだと。ビオトープを作ったり親水公園を作っても、所詮それは人工物であって真の自然ではない。。。考えさせられ、共感しました。 誰に教えられるわけでもないのに、春になると虫たちが行動を開始し、 植物は花を咲かせる。年によって、春が早く来るときと、遅く来るときが ある。その年その年の微妙な違いを、自然の中で暮らす虫や植物たちは どうやって知るのだろう。読めば読むほど不思議さを感じる。生き物たちの 何気ない行動にもちゃんとした意味がある。そのことはだいぶ解明されて きたけれど、人間がどんなに研究しても、どんなに考えても、分からない ことがまだまだたくさんある。読んでいて自然の神秘さを感じずには いられない。虫はあまり好きではないけれど、たまにはじっくり観察して みるのもいいかもしれない。 日本エッセイストクラブ、なる団体の賞を授かったエッセイであるのだけれども、そういう肩書きはどうでもいい。 読めば引き込まれる着眼点と文体のリズム。 面白い本だ。 著者は1930年生まれ、京都大学教授、滋賀県立大学学長を経て、総合地球環境額研究所所長を務められているという経歴の先生。 では何の研究をしているかといえば、「虫」が好きで、日本燐羽学会(つまり蝶とか蛾の研究をしている学会だ)の会長を務められているという方でもある。 虫の生態系、植物の性。 人間の身近にいながら、十把一からげにされている微小な生き物達の生き様を一つ一つ紐解いて、子供のような純粋な好奇心が読者にも伝染してくる。 ・・・ん、ちょっと硬くなったので文章を紹介しましょう。 ------------------- モンシロチョウの幼虫が休眠サナギになって翌春まで眠ってすごすことになるか、それともすぐチョウがかえる非休眠サナギになるかは、日長ではなく、温度できまる。だから、暖かい年には、秋おそくにまたチョウが出ることがある。その結果、ずいぶんおそくまでモンシロチョウがいることになる。 なぜこんな違いが生まれたのだろう? ---------------- いや、どっちでもいいよ。 ・・・といってしまえば済むところを、 「なぜ?」 と言って探求していく姿勢が凄い。 でも、多くのエッセイはたいてい、「○○ということが分かってきたのだ。凄い発見だ。ではなぜ○○なのか? それは未だに謎である」と余韻を残して終る。 結局よくわからない、のだけれど、そういう「分からない」の積み重ねが世界の奥深さを感じさせて、また楽しい。 虫や植物の生態、とともに学者らしい「純粋な好奇心」が感じられて、自分も「どうしてだろう?」という目線で身近な自然を見てしまうようになる本。 表紙の絵も素敵で、お勧めです。 高名な動物学者の手によるエッセイ集です。平明で分かりやすい文章の中に、様々な動物学的エピソードが盛り込まれていて、「へぇ」ボタンを押したくなります。 中でも「幻想の標語」と題された一編では、『自然と人間の共生』『生態系の調和』と言う考え方自他の誤りを明快に指摘していて、小気味いいですね。世の中の生物は種として生き残ろうとしているのではなく、遺伝子が生き残るために、その宿っている個体(つまり生物の一個体)を操って「子孫=遺伝子」を作っているというのです。したがって、一見バランスよく共存しているように見える生物界も、実は調和を保っているのではなく、遺伝子同士のエゴの妥協の到達点にすぎない。花は何とかして昆虫に花粉を運ばせたいから花にとっては不必要な蜜を作るし、昆虫も花粉を運ぶ気なんて全然ないけれど、蜜を取るときに勝手に付いてきてしまうから、やむなく運ぶだけ。互いに徹底的に利用しあっているだけで、お互いの共通理解も意思疎通もない、というのです。おもしろい。なんでも、この『利己的な遺伝子』説はドーキンスというイギリスの動物行動学者の創り出したそうです。 個人的に好きなのは、動植物が春を知る方法です。日長時間で知るもの、積算温度で知るものがるらしい。また、冬の寒さに当てないでおくと、さなぎは成虫になれずに衰弱して死ぬ話も印象的でした。すごく文章がうまいわけではないのだろうけれど、筆者の知識と動植物に対する情熱が伝わる本でした。 NHKの「生き物地球紀行」や「NATIONAL GEOGRAPHIC」が好きな人には、星五つ。 ヒトを含めた動物や植物それぞれが、それぞれの論理で生きているということを、動物行動学者の視点から易しく解説しています。生き物たちの体内にある時計で概ね一日や一年の季節を計りながら営み、そのファッションは利己的な遺伝子により決められることも書いてます。 スリッパやシャワーのについての一生物学者としての言及には、思わずにやりときました。 放送大学「動物の行動と生態」というTV授業を受けると、もっと解りやすいと思います。 春の数えかた (新潮文庫)を楽天で検索 |