日本の川を旅する―カヌー単独行 (新潮文庫)

日本の川を旅する―カヌー単独行 (新潮文庫)

売れ筋ランキング日本の川を旅する―カヌー単独行 (新潮文庫)  
日本の川を旅する―カヌー単独行 (新潮文庫)

日本の川を旅する―カヌー単独行 (新潮文庫)


価格:¥ 540(税込)
新潮社  (1985-07)
/野田 知佑/
文庫 365ページ
売れ筋ランキング:126215
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著者はむかし、ラーメンのCMに愛犬といっしょに出ていたので、ご記憶の方もいるだろう。この本はおもしろい。なんといってもカヌーという独特の視線の高さから見た川岸風景の描写が絶妙で未体験の私でも読むとカヌーを操っているかのごとき快楽を味わえた。カヌーというからには、さぞ、清流だろう、と思われるかもしれないが、この本に出てくる川は代表的な日本の川であり、護岸工事で固められた哀れな姿の川が多い。中でも東京の多摩川は最悪だ。カップルが腐臭 のする泡だらけの川の中で笑顔でボートをこぐシーンなどが紹介されているが、おぞましい光景である。最近の日本人の川や自然に対する無神経さを心底情けなく思った。
人間的なスピードで進むカヌーに乗り、魚を捕まえて食べ、河原にテントをはって夜を明かし、地元の人たちとのやりとりを楽しみながら、川を下っていく。
こんな筆者の旅は、時間と自由をたっぷり使った、現代における究極の贅沢であるように思える。

普段の道路や鉄道とはまた違う川の目線から、カヌーのペースでゆっくり眺めた日本の田舎。失われつつあるわが国の美しい自然や、地方の素朴な人々の暮らしが見事に描き出される。

 
 多くの危険と隣り合わせのカヌー単独川下りを通し、人間が生来持っている五感を操り、爽快かつ痛快な、しかし重く深い問題提起をした骨太の紀行文である。独特のユーモアと人間的感覚をもって綴られた文章は読み応え十分だ。

 本書の特長は、川下りの楽しさをリアルに伝えるにとどまらず、鋭い文明批評もしくは社会批評にまで達していることだ。国家や行政の無責任もさることながら、警察のルンペンに対する非人道的扱いなど、同類の身近な問題はその後多くが表面化し、社会で取り上げられたことは記憶に新しい。すでにこのころから野田さんは声を上げていたのだった。

 インターネットやケータイ全盛の環境で、今こそ野田さんのような本物の骨太男児が絶滅してしまうのではないかと私は危惧している。
 


日本ノンフィクション賞新人賞を受賞した、言わずと知れた野田さんの代表作です。今読み返してみるともう昔話のように感じる部分もありますが、ある意味旧き良き日本の川や自然を実感することができます。この作品が書かれた時代でさえ、すでに日本の自然は国によってどんどん破壊されつつあったというのに、今ではそのころの自然でさえ羨ましく感じるほどの自然破壊ぶりです。救いは、各地住民の周囲の自然に対する関心の高まりと、徐々に始まっている行動。野田さんの作品を読んで、国が自然に対して行なっているデタラメを知り、周りの自然を守ることを始めましょう。
この連載があったから、学生時代図書館で「旅」という雑誌を読んでいた。文章もさることながら、グラビアのモノクロ写真に不思議な旅情を感じた。カヌーという(当時は)珍奇なフネの旅。現代では忘れられた川筋の表情が、ふっと立ちのぼる。そして。自由ってなんだろう? 野田さんの文章に、頭をガーンと殴られた気がした。

40歳でこの企みに挑んだ著者の勇気、そして、ふらりと現れた著者の企画の面白さに着目した編集者のセンス。本書は、著者と編集者の幸福なコラボレーションの結晶でもあるのだ。


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