その名にちなんで (新潮文庫 ラ 16-2)

その名にちなんで (新潮文庫 ラ 16-2)

売れ筋ランキングその名にちなんで (新潮文庫 ラ 16-2)  
その名にちなんで (新潮文庫 ラ 16-2)

その名にちなんで (新潮文庫 ラ 16-2)


価格:¥ 740(税込)
新潮社  (2007-10)
/ジュンパ・ラヒリ/
文庫 468ページ
売れ筋ランキング:10022
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ラヒリの前作『停電の夜に』は、短編集であるにもかかわらず、読後感は質の高い長編を読了した満足感でいっぱいになるものだった。

今作『その名にちなんで』は、アメリカで暮らすインド系の主人公ゴーゴリの生い立ちと成長をめぐる壮大な長編小説。ゴーゴリというのはロシア系の姓なので、主人公は自分のファーストネームが外国では姓であることに苛立ちと嫌悪感を感じ始める。物語は、親がこの名をつけた思いと家族の肖像をめぐって展開する。

短編小説家に長編は荷が重いのではないかと思っていたが、その懸念は見事に裏切られた。完璧なまでに。壮大は長編にもかかわらず、珠玉の短編を思わせるような機微の変化や心象風景。都会的でありつつも、軽薄とは正反対な本格的な名作が小川高義の名訳で読めることが素晴らしい。
映画が気に入ったので原作も、
ということで読んでみましたが、
とても良かったです。

主人公の家族構成(両親と妹)が自分と同じということもあり、
家族や恋人との距離のとり方など
自分の環境といちいち比べて考えてこんでしまい
なかなか読み進めませんでした。
そういった喚起力が強い優れた小説だと思います。
インド生まれだがアメリカに渡って身を立てたベンガル人夫婦。その夫婦のもとに生まれ、ゴーゴリという名前をつけられたアメリカ生まれアメリカ育ちの主人公が、自分の名前を受け入れて、自分の人生と和解するまでを描いた親子二代に渡る物語。物語内の年代は1968年から2000年まで。

父・母・ゴーゴリ・ゴーゴリの恋人たちなど、それぞれの登場人物の生活パターンなり習慣がこと細かに描写されているのだが、そのわりに重要な出来事については、たんたんと書かれているかあるいは次の章などで唐突にさらりと知らせたりするだけである。しかし、そのさらりとした数行によって、これまでこと細かに描かれてきた登場人物の行動パターンが生まれたわけが、読んでいるものの胸にすとんと落ちてくる。

視点がこれらの登場人物の間を順次かわっていくため、その視点の移動にしばしとまどうが、あらゆる登場人物の心のうちをきちんと書き分けているところが素晴らしい。おかげで、印象深い登場人物ばかりとなった。

この印象に深く残る登場人物に揉まれ、守られ、影響を受けながら、主人公が自分の名前すなわち自分の人生を受け入れていく過程には、静かに、しかし深く心を動かされずにはいられない。

ジュンパ・ラヒリは、短編集『停電の夜に』で、登場人物への絶妙な距離感を持ちながら、性別・年代を越え、あらゆる立場からものごとを描く才能があることを読者に知らしめたが、その才能は長編でこそより生かされると本書を読んで強く思った。








アメリカを舞台に、そこに移住したインド人家族を描いています。
主人公は、二世のゴーゴリ(ニキル)です。
彼は、ベンガル式の命名法に拘った両親によってゴーゴリと名づけられます。もう一つの名前ニキルも大きくなって付けられますが、ゴーゴリと呼ばれています。
彼は、両親のベンガル式の生活様式や考え方、価値観に反発します。そして、大学に入学し、家を出て寮に入るのを機会に、ニキルを正式の名前とするための手続きをします。それは、ベンガル方式からの離脱であり、アメリカ社会への適合の決意です。
そうした彼の決意が揺らぐのが、父親からゴーゴリの由来を聞いた時でした。そして、その父親の死に直面した時、彼はそれまでのアメリカ人の二人の恋人から、インド人の恋人を選びます。まさに、インドへの回帰です。
しかし、その女性との結婚は破綻します。何故なら、その女性もインドへの反発の精神を持って生きており、ゴーゴリのようにインド回帰の気持ちがなかったからです。
アメリカとインド、両親の世代と二世の世代、こうした二面性が、モザイクのように絡み合いながら、主人公ゴーゴリは成長して行きます。

ラヒリのこの作品は、視点が何度も何度も変わります。従って、一つの視点でないので、それぞれの考え方がきちんと描写されて、いろいろな考え方が公平にきちんと描かれています。
一方で読んでいて、戸惑いを覚えてしまったことも確かですし、主人公への共感がしにくい面もあることは確かです。
それでも、それを十分に補って余りある作者の筆力が、読者を魅了してくれます。
ジュンパ・ラヒリによる初の長編小説。もちろん彼女自身の体験がベースになっていると思われる、アメリカに渡ったインド(ベンガル)人家族の30年間の物語。ゆったりと流れる大河を思わせる内容であり、衝撃的な事件などは起こらない。もちろん数々の出会いと別れはあり、それらは当事者たちには重大事件だ。そしてその事件は登場人物にとってはやや唐突に起こる。ここがラヒリの面白いところだ。彼らの対処の仕方もどちらかと言うと淡々としている。そこがなんともアジア的と言えるのではないだろか。

この物語はアメリカのインド人というやや特殊な設定ではあるが、外国で暮らす人はもちろん、故郷を離れて暮らす多くの人にとっては共感できるテーマでもある。しかしそれ以外の人にも向けられている。人は親に育てられやがてそこを旅立ち、親の影響下から脱却する。その一方で実家と何らかの関係を持つ限りは、その影響を完全には排除できないし、排除するようなものでもない。名前と言う究極の親子の絆を題材にそれを描いていると言うのは言い過ぎだろうか。そんなことを考えさせられた傑作である。
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