キリストの勝利 ローマ人の物語XIV

キリストの勝利 ローマ人の物語XIV

売れ筋ランキングキリストの勝利 ローマ人の物語XIV  
キリストの勝利 ローマ人の物語XIV

キリストの勝利 ローマ人の物語XIV


価格:¥ 2,730(税込)
新潮社  (2005-12-27)
/塩野 七生/
単行本 320ページ
売れ筋ランキング:44582
最後の努力 (ローマ人の物語 13)
ローマ人の物語 (12) -迷走する帝国
ローマ人の物語〈15〉ローマ世界の終焉
ローマ人の物語〈11〉―終わりの始まり
ローマ人の物語〈10〉― すべての道はローマに通ず

 『ローマ人の物語』をほぼ三年ぶりに手にとりました。この14巻では、コンスタンティヌス大帝亡き後のローマ帝国が描かれています。コンスタンティヌス大帝はキリスト教を国教化しましたが、それ以後キリスト教が他の宗教に対して優位に立ち、かつ内部の教派的対立を克服していく過程が描かれています。これはローマの伝統的知識人の敗北でもあり、人間よりも神に関心が向けられることでローマの豊かな文化が失われていく過程でもあります。少なくとも塩野女史はそのような観点に立っているように思われました。
 最終章は皇帝に関する記述ではなく、アタナシウス派の司教アンブロシウスに関するものとなっています。ローマ帝国の官僚として長いキャリアを積んだ彼は、きわめて冷徹な頭脳を持った人で、キリスト教の組織化に多大な貢献をしました。彼によって、宗教は国家に対して優越した地位を持つようになったともいえるでしょう。


14巻はコンスタンティウス帝からテオドシウス帝まで。辻邦生の『背教者ユリアヌス』のファンとしては待ちかねた巻であった。塩野さんもユリアヌス帝を好意的に描いていて、ひと安心。ユリアヌスの時代背景の理解が深まった。

思い入れは別にすると、本書の最大の特徴は章立てである。第一章のタイトルはコンスタンティウス帝、第二章はユリアヌス帝だが、第三章はテオドシウス帝ではなく、司教アンブロシウスとなっている。塩野七生はこの時点で権力の中心がキリスト教に移ったのを象徴したのだ。そして、キリスト教に支配されてローマ精神は帝国に先駆けて滅亡したと述べているのだろう。

ただ、先日読んだ『ローマ教皇歴代史』の印象では、宗教権力と世俗権力との関係は、上下が理論的に決まってしまうというより、双方の権力者のパーソナリティーに依存するところが大きそうなので、結局アンブロシウスとテオドシウス帝の個人的な関係が作った時代だったのだろう。ところが、その個人関係が時代を廻したのだ。キリスト教は権力と決定的に結びつき、中世が幕を開ける。

本書を読んでもキリスト教がなぜこんなに流行ったか、そして権力を握ることができたかを完全に納得できたわけではない。ローマ人の物語は基本的には権力者の物語だし、キリスト教はむしろ下層から広まったのである。まあ、どうしてキリスト教がここまで広がったかは世紀の謎なんだし、そんなことが簡単に分かるわけないよなあ。
私は、古代ローマ帝国がコンスタンチヌス大帝により、キリスト教国家へと転じた辺りのことは、イマイチ、どうにも、理解できていないのだが、これは、むしろ、今のアメリカにおけるメガチャーチと呼ばれるキリスト教系の巨大宗教保守団体の台頭を見ていると、何となく、わかるような気がしてくる。
人々は、自分の生活が苦しくなり始め、また、明らかに国家が行き詰まり始め、希望が見出せなくなると、敢えて、見たくない物は見ようとしない・・・、つまり、宗教への傾倒を深めるのではないだろうかと。
巨大宗教団体は、信者を集めることで、説教本などの印税や寄付金などで財政は潤い、潤沢な資金は教会を一大レジャーランドに変え、さらに、人を集める・・・。
その結果、信者は教会・・・、いや、神職が推す人に投票するようになり、政治も、ますますこれらの力を憚るようになる・・・。
コンスタンチヌス大帝後は、ついに、司教・アンブロジウスが皇帝以上の勢威を得て行ったことに似ているように思えるのである。
ローマ帝国の栄光と衰退に興味があり、塩野七生氏の「ローマ人の物語」を読んでいます。物語も進み第14巻は「キリスト教の勝利」という副題が付いています。

ローマとキリスト教というと皇帝ネロがキリスト教徒を迫害したが最後には国教になったことを習ったことは覚えていました。今回、この本を読んでキリスト教が国教になったのは、コンスタンティヌスからテオドシウスに至る皇帝の優遇政策にその一因があると分かり納得しました。坊主丸儲けという言葉がありますが古今東西を問わず宗教は税金とは縁は無いようです。

従来の多神教擁護者のシンマックスと司教アンブロシウスの論争でアンブロシウスが勝利する場面では時代の流れを感じさせます。アンブロシウスは洗礼を受けた皇帝テオドシウスを手玉にとるくだりでは宗教の持つパワーの凄さを感じました。しかしそれを知っていたがゆえに死の直前まで洗礼を受けなかった皇帝もいたわけで世渡りには深い洞察が必要と改めて思った次第です。

 ローマの衰退は目をおおうばかりとなり、本書では、最後を迎える直前の紀元4世紀中半から後半が描かれています。
 コンスタンティヌス帝は、3人の息子と親族にローマ帝国の分割統治を命じましたが、息子のコンスタンティウスは親族2人を謀殺します。同じ母親の血を引く3人ならうまく協力していけると思ったのもつかの間、他の2人の兄弟が蛮族との戦闘や部下の謀反で殺されてしまいました。
 仕方なく、親族の謀殺から生き残った二人の従兄弟を順次共同統治者として任命します。猜疑心の強いコンスタンティウスが謀反の疑いでガルスを殺し、際限のない謀殺の矛先をユリアヌスに向けたとき、ついに命が尽きました。
 歴史上「背教者」と呼ばれたユリアヌスが、少しだけローマ帝国衰退を押しとどめようとしましたが、2年足らずで戦死。その後の2人の皇帝も、北方民族の侵入を押しとどめられず、とうとうテオドシウス帝の死後、2子によって帝国は東西に2分されました。

 あらすじにすれば、わずかな行数で説明できるこの期間を、著者の塩野氏は克明に記録していきます。

 本書では、軍事・政治上の出来事と平行して、副題ともなっているキリスト教の勝利が語られています。
 著者は、自らを「不信心者」と称しており、キリスト教が皇帝という政治権力よりも力を持つようになった“世俗化”に否定的意見を持っています。
 まして、ギリシア・ローマの「異教」を打ち破った三位一体勢力(現在のカトリック)が、内部の「異端」を迫害するようになったことを、
  キリスト教徒でいながら同じキリスト教からの迫害を受け、
  悪ければ殉教するという現象の始まりであった。
と述べていました。

 ローマ帝国の滅亡と共に、暗黒の中世が始まることを予感させる14巻でした。
 いよいよ、次の15巻でローマ帝国の滅亡を迎えます。
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