死の壁 (新潮新書) |
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前著「バカの壁」はそれほど印象に残っていないが、本書では「死」という永遠のテーマについて、哲学的見地というよりは医学的・社会的見地から述べられており、非常に興味深く読みやすい内容に仕上がっている。 具体的に養老氏は、「死とは何か」と抽象的に考えるのではなく、「死体とは何か」を具体的に考えることにより、「死」を捉えようとする。その際、「一人称の死体」(存在することのない自分の死体)、「二人称の死体」(死体ではない特別な身内の死体)、「三人称の死体」(アカの他人である死体である死体)に分類して考えている点は、まさに本質を突いているように思う。 それ以外にも「脳死」や「安楽死」、「死刑」などの難しい問題にも触れており、それらを「共同体のルール」という視点から捉えているのは、ある種の説得力を感じる。それらの正解なき難問を、「する側」(患者・囚人やその家族)からではなく「させる側」(医者や執行官)から論じているのもユニークで、ちょうど今「死に神」発言で話題になっている法務大臣を思い浮かべてしまう。 養老先生の本を読んでいつも感じるのは、簡単な読みやすい 文調で書かれている本でも、その内容は実に深いということ。 今回の本でも、「死」という誰もが避けることはできない 問題について養老先生に考えをまとめたもの。 「自分は自分」という自分が不易なものである考えではなく、 自分が変化していくものであるということ、安楽死というもの を医者という立場から考える視点、死というものを考える場合、 二人称の死(簡単にいえば身内など近しいものの死)が与える 影響とそれに対してどう対応していくかが大切だという視点、 人生とは死を考える上で充実していくという点… どれも私が今まで思いもしなかった視点であるし、言われてみると そのとおりと納得できる内容であった。 本の中からも養老先生の頭のよさを感じるものだった。 死の壁というタイトルからすると少し敬遠される方も居られるかもしれませんが、すごく読みやすいです。さすが養老先生といった感じです。生まれて死んで行くのは避けて通れぬ道。どうせならそのことについて知っておくのも悪くないでしょう。何故なら受け入れるべきものだからです。これが絶対ではないでしょうが、読んでみて下さい。 養老先生の一番凄いところは今まで当たり前だと思っていたことを「いや、そうじゃないんだよ」と気付かせてくれるところです。この本では8章の「安楽死とエリート」のところがそうでした。この章では「エリートとは責任を負うこと」「汚れ仕事を引き受けること」とあります。エリートというと一流大学を卒業して一流企業に勤めて高い年収を得ている人のことと思っていましたが本来はそうじゃないんですね。余談ですが先日「ガメラ」のDVDを見ていたら養老先生が解剖学者の役(そのまんまじゃないか)で出ていました。お茶目なので余計好きになりました。 本書は自らの死生観を考える上で、一助となる良書だと思います。 この本は、死の文化や歴史に関して淡々と書かれた物であり、「死は全ての生物にあるありふれたもの」という筆者の思いが伝わってきます。 日本人の死生観に対する見解にはうなずかされることも多く、勉強になりました。 死は特別なものではない。日々どこにでもあるもの。 しかし、死は自らの終わりを示す。その先は誰にもわからない。 この本を読んだあとの読感。 「人は必ず死ぬし、生き物は必ず死ぬ。それは当たり前のことでありふれた事。しかし、死には様々な死があり、その時々に人々は死と向き合ってきた。死を恐れるばかりではつまらない。死をありふれたものとして認識し、冷静に死と向き合っていければ幸せなのではないかと思う。」 死の壁 (新潮新書)を楽天で検索 |