問題解決のための「社会技術」―分野を超えた知の協働 (中公新書)

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問題解決のための「社会技術」―分野を超えた知の協働 (中公新書)

問題解決のための「社会技術」―分野を超えた知の協働 (中公新書)


価格:¥ 714(税込)
中央公論新社  (2004-03)
/堀井 秀之/
新書 172ページ
売れ筋ランキング:258019
安全安心のための社会技術
現代社会と知の創造―モード論とは何か (丸善ライブラリー)
科学技術社会論の技法
専門知と公共性―科学技術社会論の構築へ向けて
安全と安心の科学 (集英社新書)

問題を発見し、解決し、検証する、というサイクル、いわゆる「問題解決法」についてプロセスとして紹介し、その際に、分野横断的な知識を総動員することの重要性を述べた本。あらためて、こういうプロセスを意識的に行い、視野を広げて取り組むことの大切さを確認できる。ただ、これはコンサルなどでも蓄積されている問題解決のテクニックにも通じるところがあり、特段目新しいものでもない。実践的なテクニックを学びたければ、その方面のテキストを読んだ方がいいだろう。他の分野での解決策をアナロジーとして用いる、とか、「どう解決したか」のパターンをより多く経験し、記憶している人が強い、とか、言わば数学の勉強みたいな側面が問題解決にはあるのだと感じた。文章と内容の深さは今ひとつ。こういうコンセプトがあることを知るには手軽な一冊だろう。
科学技術の進歩により、複雑で解決困難に見える問題が起こるようになってきた。そのような社会問題を解決するためには、問題を「構造化」&「可視化」し俯瞰的に問題を把握することにより分野を超えた知識を総動員して、社会システムとして解決にあたることが必要である。

筆者は本書の冒頭(はじめに)で、「船が沈むとき、船長は船とともに沈む」という規範を取り上げている。船の安全は、様々な科学技術の進歩により飛躍的に高まった。が、荒れ狂う嵐の中で、今や沈まんとする船を必死に操舵する船長、その指示に船員たちを従わせるものは、法制度でも経済制度でも無く、船長への信頼である。船長への絶対の信頼を担保するものが船長の責任感であり、その責任感を担保するものが「船が沈むとき、船長は船とともに沈む」という規範である。船の工学技術とこの規範を組み合わせたもの、それが船の安全性確保のための「技術」である。

筆者は最新の研究成果として、発生する問題はそれが有するリスク特性により、3種類に分類できることを例示している。
A:低頻度、大被害、自然的、恐怖感大(土砂災害・巨大地震・浸水被害・ビル火災):ハード面の強化、対策への助成・優遇措置、保険制度の充実
B:高頻度、被害個人ベース・小規模、人為的、恐怖感小、未知性小(交差点歩行者事故、農業食品汚染、医療・投薬ミス、個人情報漏洩):有効な対策は様々、統一的な傾向少
C:低頻度、小被害、人為的、未知性大(遺伝子組換食品、臨界事故、薬害エイズ、狂牛病):安全性評価結果・科学的根拠の情報提供、被害メカニズムの解明、ソフト面の強化、規制、市民の意思決定への参加

このように、リスクの特性と有効な対策の関係には一定の関係があることが示唆されており、このような対応関係の理由を解明することにより、普遍的な法則を導き出せる可能性がある。

 以下3点において、この著書は読んでみると面白いと思います。
 ①「構造化」と「可視化」の推奨
 ②俯瞰的な(全体を見渡す、広い視野で)問題把握による革新的解決策の主張
 ③社会技術を企業組織へ導入することの奨励

 ①に関して、複雑な社会上の問題を解決するにはその問題を構造的に捉えられるようにし、何が、どこで、どういう点で問題になっているかを明確に見えるようにすることが重要だと主張されています。
そのケースとしてSARS問題などの社会的問題から、大学講義が面白くないなどの日常の何気ない問題まで、取り上げられています。

 ②に関して、一つの問題を法的、経済的、技術的、など多角的視点から捉えることによって、ある分野での解決法が他の分野でも活用され、それが革新的解決策につながると主張されています。
 一元的にではなく多面的に問題を捉えようとする筆者の視点に共感を得ました。

 ③に関して、社会問題解決方法を企業の抱えるコンプライアンス経営における問題解決にも充当するとよいと主張されています。
 そのケースとして、シンクタンクのコンプライアンス問題が挙げられており、特に関心を持ちました。
 社会問題解決アプローチを応用したコンプライアンス問題解決法がいくつか提示されています。


本書は、科学技術の進歩に起因する社会問題の解決困難性を著者独自の視点から捉えなおし、極めて広範な問題に適用できる解決の方法論を構築してしまおうという、斬新かつ大胆な試みを紹介する書であると思う。

「問題解決のために活用できる知を総動員する」「問題の全体像を見渡す」という二点に特徴付けられる解決の方法論は、「問題の認識⇒革新的技術の発想⇒それによる社会変化の予測⇒その変化の評価」というプロセスに沿って行われる。

それ自体は特に目新しくないが、本書の画期的な点は、このプロセスに沿って実際に設計された多様な分野の問題解決策が具体的に提示されていることである。だからこそ、上記のプロセスの各段階でどういうことをやればよいのかが、だんだん分かってくる。「新たに直面する社会問題にも、この方法論によって対処できるのではないか?」という期待を本書が懐かせることに成功している要因がここにあるのではないか。

一つ不満があるとすれば、方法論としての完成度に対してである。例えば、著者は例題に応じて種類の異なる「問題の認識」のアプローチをしているが、それでは「どういうときにどういう方法を選べばよいの?」という点は少々気になる。「革新的技術の発想」についても、もう少し体系的な発想法の提示が欲しかった。この点は著者の今後の展開に期待したい。


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