陰の季節 (文春文庫) |
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第5回松本清張賞受賞作。 この本を手にするのは、もう何度目になるだろう。 読むたびに感心させられる。 短編の、短い枚数の間に、細やかにディテ−ルを積み重ねて、リアリティのある もっといえば厚みのある小説に仕上げてしまう技巧は見事だ。 本書の32ページ真ん中辺りに、以下のような記述がある。 通された和室には神棚があった。大明神の神符が祀られている。 きちんと手が入っているとみえ、白木にくすみ一つなく、供した榊の葉にも深い艶があった。 欄間に、墨痕鮮やかな『治にいて乱を忘れず』の書が飾られ、壁には額に納まった『警察職員の信条』が、恭しく掛けられている。 この4行の描写で、読み手に、尾坂部の人となりを鮮やかに印象付けている。 しかも、この描写がさりげなく挿入されていて、 まったく不自然な感じがないところがすごい。 ディテールの積み重ねでリアリティを出すという手法は、 はまれば見事であるが、 いらないディテールまで書きすぎて、文章が冗長になり、 結果、伝えたいことが伝わらずという 本末転倒な作家が多い(若い書き手に多い)中、 ディテールの取捨選択が出来ており、 伝えるべきことは伝えるという作者の技量はすばらしい。 そして、その技量に裏打ちされたストーリーテリングのうまさ。 多くの読者がこの本を手に取られんことを。 友人に薦められて初めて読んだ横山秀夫の小説です。 多くのレビューにあるとおり、確かに面白い! 警察内部で起こる事件を背景として、 丹念に描かれた立身出世の羨望や計算が主人公をかきたて、 ストーリがーテンポよく進行していきます。 もちろんスリリングな筋書きだけでなく、 予期せぬ驚きの結末にページを繰る手が止まりません。 本書の最後に収められている「鞄」を読む終えると同時に、 同氏の文庫本を買い増してしまいました。 横山秀夫といえば今やミステリー界のエースですよね。『クライマーズ・ハイ』 は読みましたが、次に読むのは、彼が最初に賞を受けた作品を読もうと思いました。 最初に賞を受けた作品は作者のそれ以降の創作の基点となっている事が多く、 作家を理解するうえで有用です。その意味で横山秀夫を知りたいと思うのなら (作者目線で作品を読むのであれば)最初に読むべきなのは『半落ち』でもなく、 『臨場』でもなく、本作なのではないでしょうか。 私自身、就職後一貫して営業部門に所属しており、自分が勤務している会社であっても 管理部門というのはブラックボックスです。そのためどうしても一歩引いて彼らに 接しています。特に「新入社員のときからずっと人事でした」なんて人間もいて 彼らに組織の運営を任せられるのか?と疑問に思っています。 本作を読んだからといって、管理部門の人の「気持ちが分かりました」とか、 「彼らも大変なんだなぁ」と単純に解った気にはなれませんが、彼らの仕事の 一断面を見る事ができた事は収穫でした。 もちろん読み物としても楽しませてもらいましたので、☆4つです。 警察の内部の人間模様や、内部で起きた事件などを描いている。 人事を担当する人間の苦悩や、ある誹謗中傷から巻き起こった 警察人生を狂わせる出来事や、婦警が謎の失踪をした話や、 議員を相手に飛び回る秘書課の人間が落とし穴に落とされる話など、 全部で4編の短編集。 婦警の謎の失踪は、失踪した婦警は「FACE」という小説のヒロインに なっているから、またそちらの視点から読むのも面白い。 この話では、上司の婦警の視点から物語が進んでいる。 それぞれの話が、別の人物の視点から描かれており、一話目に出てくる 二渡という人事の男が、他の主人公たちから見ると、脅威の人間のように 描かれているのが面白い。 起こる事件は、内部での些細なものだから、刑事が出てくるわけではないけど、 謎解き要素もあって、とても深い事情も絡んでいて、ずっしりした読後感がある。 読み始めは取っ付き難いところがあるのですが、ぐいぐいと引き込まれます。 何処が違うのだろうと思っていたのですが、解説にも記されている通り警察小説ではありますが、捜査畑の人間が主人公ではなく管理畑の人間が主人公なんです。 4つの短編が収録されていますが、それぞれ人事、組織内の対立、出世争いが上手く散りばめられ生々しさを読者に与えます。 「鞄」などは、読みながら身につまされる人が多いのではないでしょうか。 私は、いつの間にか主人公になりきるほど没頭してしまいました。 切れの良い短編4編、お勧めです。 そろそろ、横山秀夫の長編を読んでみたいです。 陰の季節 (文春文庫)を楽天で検索 |