「忘れられた日本人」の舞台を旅する----宮本常一の軌跡

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売れ筋ランキング「忘れられた日本人」の舞台を旅する----宮本常一の軌跡  
「忘れられた日本人」の舞台を旅する----宮本常一の軌跡

「忘れられた日本人」の舞台を旅する----宮本常一の軌跡


価格:¥ 1,890(税込)
河出書房新社  (2006-02-09)
/木村 哲也/
単行本 256ページ
売れ筋ランキング:190319
『忘れられた日本人』を読む (岩波セミナーブックス)
宮本常一の写真に読む失われた昭和
日本の宿
宮本常一―「忘れられた日本人」を訪ねて (別冊太陽 日本のこころ 148) (別冊太陽 日本のこころ 148)
日本文化の形成 (講談社学術文庫)

1971年生まれの木村氏が大学ー大学院院時代にひとり新聞「みるきくあるく」等に連載して文章をまとめたそうである。
宮本常一の様に野宿したり民家に泊まりながら宮本常一の歩いた道をたどり、「忘れられた日本人」に登場する人やその末裔から話を聞いている。
当時の木村さんの若さからか、固さの見える文章であるが、それも彼の誠実さの現れであろう。現在は宮本氏の出生地である周防大島文化交流センターで学芸員として宮本さんが残した資料を未来へ継承すべく力をそそいている。是非とも宮本ワールドを、そして宮本スピリッツを多くの人へ、未来へ伝えてもらいたい。
「ヤンキーのくせに、人なつっこく。。。」という文章が木村さんの若さを表しているのかな(笑)
軒を貸して母屋を取られる(のきをかしておもやをとられる)
死人に口無し。リスペクトを装えばどんな曲解もまかり通る。
ネットでそれをやればすぐに炎上するが、書籍なら一方通行だからok。
 わたしは、『忘れられた日本人』に収められたいくつかの挿話を、大
昔に『日本残酷物語』で読みました。それは、まさしく「バラ色の発展
法則などというものはなく、もしあるとしても、その一人一人の生命を
埋没していく容赦もない自然と歴史の暴力の前には、引かれもののの小
唄や老婆の念仏よりもはかない気休めのように見える」(橋川文三『歴
史と体験』)ものでした。そして、その時走った戦慄と同時の感じたあ
る不思議な懐かしさを今でも時々思い出し、あれは何っだたのかと自問
することがあります。本書には、それを考えるヒントがあると思いま
す。
 宮本の聞き書きの対象になった者の多くは、明治維新をはさんで生き
た人々だったそうです。歴史の激動期を見聞することで、ものごとの変
遷を記銘できたことに加え、世の栄枯盛衰に無常を感じていた人々を敢
て選んでいたそうです。もうひとつは、そのような歴史叙述の方法が、
一方では西欧近代に範型を求める川島法社会学などの近代主義を相対化
すると共に、他方ではそれに対抗すべき民俗学が常民史に一元化してし
まったことへの批判を意図していたのではないかという指摘です。特
に、漂泊・差別・性という視角を封印してしまった民俗学への飽き足ら
なさは、尋常のものではなかったようです。それらのことを含め、人そ
れぞれの一回きりの人生にまつわる豊饒と哀切を歴史事象として等身大
で書ききること、それを自らの学問として構想していたように見えま
す。
 それはともかく、本書を読んで、宮本の生きた時代から今日までの間
に失われたもの、篤農家と世間師、善根宿とメシモライ、そして焼畑と
共同作業を通じての女の世間などなど、その多さに気が付き愕然としま
す。古老の遺書に文字を持ったことの喜びを見出した宮本が、簡単に情
報をデジタル化し、相互にやりとりする現在の暮らしをみたときには、
一体どのように言うのでしょうか。

宮本常一の名作『忘れられた日本人』の魅力が倍加する本。

これだけ人と物事に密着しながら、
全く馴れなれしくならず、絶えず爽やかな風が吹き抜けているような新鮮な文体。
旅で培った著者の力量は並大抵のものではないと感じる。

「土佐源氏」成立の経緯に分け入って創作疑惑を追及。
ハンセン病者の境遇に胸を痛めながら、
隔離施設には生涯踏み込もうとしなかった宮本の欺瞞をさりげなく指摘。
離島振興論の変遷をたどり、その問題点を指摘するあたり、
宮本への熱い敬意に裏打ちされながらも醒めた視点が一貫していて、
偶像崇拝に陥る危険から救っている。

民俗学史の解説もわかりやすく丁寧で、
専門の領域を超えて広く読まれるべき良質のルポルタージュであり評伝。
宮本常一の名著『忘れられた日本人』の舞台すべてを旅した紀行文。
しかも同じ土地に二度三度訪ねているところが凄い。

宮本の旅から半世紀。
その間、その土地の人たちがどう生きてきたか、克明に記録してゆく。
宮本の作品とつなげて読むと、明治維新〜戦中〜戦後までの一大近現代史となる。

東北、三河山中、大阪、瀬戸内海、四国山中、玄界灘の離島…。
宮本の作品がそうであるように、この本からも日本文化の多様性を教えられる。

「土佐源氏」を創作ではないかと疑った人に対して、
取材ノートを手に憤ったという逸話を、
岩波文庫解説で網野善彦が吉沢和夫氏の証言として紹介しているが、
著者は吉沢氏にも取材し、網野の記述の誤りを引き出している点なども価値が高い。

最後にひとつ。
この本は宮本の足跡をたどった「旅の記録」という評価が今後なされる予感があるが、
単に旅するだけでなく、著者の文献資料の読み込みの丁寧さも讃えておきたい。
巻末に上げられた参考文献は130点を超えている。

ダンボール箱に何十冊と詰った
「文字をもつ伝承者」田中梅治翁の手書きの遺稿から
宮本来訪の記事を見つけ出すなどの根気は、
単なる旅への情熱とは別に、文献資料の探索力の高さの証左だろう。


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