世界でいちばん優しい椅子 |
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旺盛な好奇心と柔軟な精神で取り組んできた五十年のもの作り。日本を代表する椅子屋(ご自身がそうおっしゃる)さんである著者が、ここへ来て感じていること、考え込んでしまうことが「我々は何を作るべきか」です。 この五十年間もの作りの現場にいながらみてきた、取り巻く環境の変化と自身がどうしても感じてしまう違和感を検証し、その根拠を具体的に指し示しています。ときどきの変化に柔軟に対応しながらも、もの作りとしてやってきた自身が今考えてしまうのは、五十年でもまだまだ足りない椅子作りの奥深さ、むずかしさ。 同時に経済原則で動く社会の動きに巻き込まれざるを得ないもの作りは、しかしそれだけで良いのかどうかというある思想的な視点も提示しています。「何を作るべきか」の答えももちろん出していますが、それは読んでのお楽しみということにしておきましょう。 私も同じ業界にいるものとして、やはり「我々は何を作るべきか」を日々自問しています。たまに著者と断片的な話をすることはあっても、これまで著者の全貌を具体的に知ることはありませんでしたから、本書は驚くほどの内容を詰め込んだ著者の自伝といってもいいほどの側面も持っています。椅子に興味を持つ方も普通の読書人の方も、もの作りの現場を知る格好の一冊ですが、ものを作っている私のような者にはまた別の示唆を与えるものです。 また、私たちの暮らしの中にある多くのものの一つ一つに思いを馳せるきっかけを与えてくれる、大きな一冊と もなっています。 著者は椅子作り五十年の練達の職人であり、なおかつ自らの工房を経営する経営者でもある。著者がかかわる仕事は、経済性と創造性のジレンマに悩むことも多いが、そのどちらの立場もおろそかにせず、常に新しい方法でジレンマを解決する方向に取り組むものづくりの「現場」の物語がこれでもかこれでもかと展開され、読んでいて圧倒されるほど充実した本。 座り心地が悪いと思えば列車のシートを分解し、面白そうなメーカーを見つければ顔つなぎしてもらうために事業所の前で誰か知り合いが出入りしないかと待ち伏せる。著者は自分の工房という現場のみならず、出かけていく先々で問題を発見し、それを解決しようとするのである。つまりどこにでもこの著者が出掛けて行けば、そこが現場になるのだ。そうした著者の取り組みを通して、著名な建築家やデザイナー、また白洲正子のような大趣味人との交流が広がっていくエピソードも面白い。徒弟時代の苦労話や戦後の家具産業の足取りなど、歴史的証言としても興味深い。椅子好き必読。クリエイティヴなものづくりに関わる人も必読。 世界でいちばん優しい椅子を楽天で検索 |