天命 (幻冬舎文庫 い 5-13)

天命 (幻冬舎文庫 い 5-13)

売れ筋ランキング天命 (幻冬舎文庫 い 5-13)  
天命 (幻冬舎文庫 い 5-13)

天命 (幻冬舎文庫 い 5-13)


価格:¥ 520(税込)
幻冬舎  (2008-09)
/五木 寛之/
文庫 241ページ
売れ筋ランキング:35901
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五木さんの文はとても好きで何冊も読んでいますが彼の作品に通奏低音のようにいつも流れているのは引き揚げ時の自らの苦悩体験でした。そしてこの「天命」の思考の原点も、消したくても消せない記憶。その時の耐えられない理不尽さと、生きるため悲しいまでの醜悪さを露呈する自分をも含めた人間の現実がもとになっていると思います。そこで「善き者は先に死ぬ」という理論が構築されまた歎異抄の悪人正機説の解釈へとつながります。さまざまな角度からまるで自分を納得させるために書かれたような作品です。本人もいうように病に関していわんや死に関しては自分の心理的近親者に訪れないかぎり「他人事」なんです。「天命」は五木さん自身を納得させんが為に書かれた(あるいは天から書かされた)からこそ読者の心にまっすぐ入ってくるのだと思います。このものすごい筆力は他力パワーもあると感じました。
五木寛之さんの文章に触れることは、それだけでとても癒され、気持ちが和らぎます。天命というタイトルですが、天命を解説した本ではありません。五木さんが御自身の体験を通して、天命という言葉から直感的に抱く感覚を文章に起こしたものだと言えるのではないかと思います。全体を読んでみて、天命について五木さんはこういう風に思っているんだな、と感じる作品です。私には、特に死生観を持つことの大切さ、日本人の持つ、アニミズム、シンクレティズムの特殊性と稀有性が感じられました。五木さんは、大多数の普通の人たちと同じ視点でおられます。日本を代表する作家でありながら、常に私達と同じように悩み、苦しみ、のたうち回って、語られる言葉は、優しく、慈悲に満ちています。人が持つ様々な欲望や執着を捨てよ、と宗教では教えますが、人はそんなに簡単に捨てられるもんではないよ、というところから出発し、気休めでなく、煩悶してゆく過程に救われる場合もあると思うのです。
文庫になったのをきっかけに読んでみました。
3年前の本であるにも関わらず、全く古く無い!!
むしろ輝きを増している感さえあります。
日本社会がなんら変わってないってことにもなるんでしょうが;
五木さんの死生観が、本質を衝いたものに他ならないからだと思います。

平和ボケしてしまった世の中です。
戦時なら当たり前のように、「死」を身近に感じたことでしょう。
忌み嫌わず「死」=「生」を考える機会があってもいいと思います。

是非若い方にも読んでいただきたい一冊です。

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