「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書 61) |
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○読み始めたきっかけ 「いつまでもデブと思うなよ」が面白かったので、こちらの本も読み始めました。岡田氏はとても好奇心 の強い子供だったのではないかと思います。そしてそこ好奇心をこまめに調査/分析/記録するのが好きな タイプなのでしょう。コレクションの趣味もあると思います。そうでなければ、レコーディングダイエット を続けられなかったと思いますし、今回の世界征服についての考察も、普通の人はここまで調べたり考えた りしないでしょう。興味があったら、とことん調べて考えて、自分なりの結論を出してみること。この本を 読んで、勉強になりました。 ○心に残る言葉 p.148 アメリカの南北戦争で、北軍が勝利したのは「自由主義経済のほうが奴隷主義経済よりも儲か る」という事実のため。 →北部では奴隷を解放して、「消費者」となった。また、自分で稼ぐようになってからは、モチベーション もあがって生産性が高くなった。そのため、経済力が南部に比べて北部が勝るようになり、装備や兵站など で南軍に差がついたため、北軍が勝利した。このように岡田氏は考察をしています。これが事実かどうかは 分かりませんが、論理としては成り立っていると思います。他の方の考察も調べてみたいと思いました。 p。182 「悪」とは、「その時代の価値/秩序基準を破壊するもの」です。(中略)では、「現代の価 値・秩序基準」とは何か?それは、「自由主義経済」と「情報の自由化」です。 p.185 世界征服を目指す人とは、現状を否定する人のことです。 ○どんな人にお勧めか ふとした疑問があるとどうしても解決しないと気分が悪い人にお勧めです。 「世界征服」とは、案外割の合わない行為らしい。「目的」を持って「ビジョン」を掲げ、賛同してくれる「人材」を募集し、武器や格闘の「研修教育」を行う傍ら、活動のための「資金」集めに奔走し、それを元手に「兵器」や「秘密基地」を購入・建設する。そしてようやく準備が整い、「計画」を遂行した結果幸い世界を征服できたとしても、実は本当の苦労がそこから始まる。 支配下に置いた者同士の争い事の仲裁、贅沢な暮らしを続けるための産業の振興、部下のモチベーション維持、後継者の育成、あるいは温暖化をはじめ地球規模の問題にどう対策を講じるか等々、今の世界(地球)には支配者が手を下さねばならない問題が山積みだ。支配者だからといってあまりに強圧的手段ばかり取っていると、いつ配下の者に逆ギレされたり寝首をかかれるか分からず、おちおち眠ることもできない。 仮面ライダーも大変だが、ショッカーの首領をやるのも結構しんどいもんだなあと、本書を読んで感じた次第。 昔から、悪の秘密結社はなぜ「世界征服」をしようとするのか、けっこう謎だった。最近、息子と一緒に昔の「仮面ライダー」なんかを見たりするけれど、やってることといったら、学校給食に毒を入れたりとか、そんなレベルだったりする。というかそもそも、世界を破壊することがなぜ征服なのだろうか、という突っ込みを入れてしまう。廃墟となった世界にいて、楽しいのか?っていう。まあ、それは人の好き好きなわけで、人類を滅亡させて、そこでうまい酒を飲みたいっていうのはあるのかもしれないけれども。 とまあ、そういうわけで、「世界征服」という楽しい話題(酒の肴にピッタリのテーマだ)を提供してくれるのが本書。もともと、ロフトプラスワンという居酒屋風トークライブハウスでのイベントをもとに、本にしたわけで、すばらしくマジメでおバカな本なのです。 どのぐらいマジメかというと、まずは「世界征服」の目的を明らかにしています。ブッシュ君たちのようにお金が欲しいとか、石原君のようにちやほやされたいとか、麻原君のように無視したやつを見返してやりたいとか、いろいろあるわけです(って実在の人物ばかりですね)。それはともかく、ショッカーについても、「世界征服の後のビジョンがないので失格」などと手厳しいことも言ってくれます。 さらに、「支配者」のタイプの分類。魔王タイプ、独裁者タイプ、王様タイプ、黒幕タイプなどなど。ちなみにぼくは王様タイプでした。でも、それにしても支配者っていうのは、けっこう大変だということが明らかにされています。アドルフ・ヒトラーも自殺しなけりゃそのうち過労死していたのではないか、と指摘されるくらいですから。支配者ですから、マネジメントもしなきゃいけないし、いざとなったら表に出なきゃいけないんですよね。 そして「世界征服」の手順。これさえあれば、世界征服ができるか、というと、けっこう苦労が多いんですけど。しかも、支配した後のビジョンが求められるし。そして、そんな「世界征服」のウソくささにみんな気付いているのか、最近のヒーロー物では、悪はあまり世界征服を目指さなくなりました。 ヒーローアニメや特撮ドラマにたびたび出現して、何かと悪さをする悪の結社。 部下に命令を下すとき、ヒーローに動機を問いただされたとき、彼らがたびたび口にする「セカイセイフク」という言葉。 子どもの頃からアニメや戦隊モノに浸りきってきた人にとっては、あまりにも自明になりすぎていて(普通は自明にはならないはずだが)、 悪者がそれを口にするだけで、僕たちの脳内で勝手にある程度まで世界観を造り上げてしまう力を持つ、この「世界征服」という言葉。 でも、それっていったい何をすることなんだろう?? 僕らはそれについて知っているようで、知っていることは、あまりにも少ない。 何なんだ?「世界征服」って。 そんな疑問に、本書で「オタキング」こと岡田斗司夫が答えてくれる。 第1章ではまず、「世界征服」を目的から再検討して、その動機からその種類を分類、第2章で読者であるあなたが「どんな征服者か?」 を判定してくれる。そして第3章からはいよいよ、世界征服の実質的な運営方法を懇切丁寧に解説してくれる。 ここまでの内容であるなら、芸の質でいえば「空想科学読本」に似ている。あれは自然科学の観点から、アニメや特撮ドラマでおきる 超常現象を解剖していたのに対して、本書があつかうのは「世界征服」という言葉、よって人文科学の領域になる。 しかし、第4章の「世界征服は可能か?」はそれまでの流れを一転させる。 この章では、世界征服を成し遂げる上で必要となる動機の「悪」についての、いくぶん抽象度の高い議論が展開されていく。 悪って何? 悪さをすること? じゃあ、その悪さっていうのは何で、いったい誰がそれを決めるの? それを検討していった末、岡田氏が結論した現代社会における「悪」とは、まことに「意外なこと」になるのであった。 この抽象度が高くなる章が最後にくることによって、本書は「オタクの戯言」以上に深みがあるものとなり、より広い読者を射程に入れることになる。 だからこそ売れたんだと思う。 本書はおもしろいが、それ以上に「ベストセラー作家 岡田斗司夫」の作家としてのバランス感覚を見た。 世界征服が、どれだけ大変で「不可能」なものなのか・・・ アニメの世界や現実の世界における世界征服の例から検証。 この検証は、各種の陰謀説や陰謀史観への批判とも読むことが できると思いました。 「そんなことして、何になるのか?」 「大変じゃない?」 また、 「世界征服をした後、何をしたいの?」を 「金持ちになった後で、何をしたいの?」と置き換えると 安易な成功を求める自己啓発書に対する批判ともなっています。 居酒屋でオタクが楽しく語っているような雰囲気で始まる本書 ですが、 「正しいこと」を強く求める人は、その正義感から「皆殺し」という 方法で世界を「征服」しようとしてしまうことになる傾向がある、 といった考察があったりして、話はどんどん深く進行していきます。 世界征服を企てるには、仲間を集めなければならない・・・という あたりでは、橋本治『青空人生相談所』(P23) 「今の世の中っていうのは、どこまで自分の個人的な不幸を 一般化できるかってことにかかっています。」という フレーズを思い出しました。 世界征服は大変だ、しかし不可能ではない・・・ 可能であるとすれば、こういう形であり得るだろう・・・ 本書の結論は、世界征服=革命とも考えられる 21世紀の新しい生き方、社会のあり方の提案になっています。 日本を1965年以前の日本に戻してしまおう!という 橋本治『日本の行く道』と近いものを感じました。 ・・・・ ただ、『デビルマン』に関して3行しか触れられていないのは 残念。しかし、それを本気で取り上げたら、結論まで行けなかったし、 違う本になってしまっただろうとは思います。 「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書 61)を楽天で検索 |