新訂 字統 |
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今回、「算俎」という和算書の名にある「俎」の字を調べたくて字統に頼った。私のもっているのは新訂ではなく古いものだが、説明がわかりにくいことを経験することが多いようだ。この字についても郭沫若は「且」を牡器の象としたが、白川静は字形に合わないとして別の象を提案している。この別の提案には意義はないのだが、郭沫若説をきっぱり否定する根拠がわからない。BだからAでないという論法は、漢字の歴史的成立の論理にあてはめられるのだろうか。くわしくここで説明する紙幅はないが、六書のどれをとってもそうだが、特に象形は最初に言ったものが勝ちで、他人の説の肯定はできても否定は難しいのではないか。論理的に追い込む象形解釈をこの字について白川静は言っているが、そうだからといって郭沫若説を否定する根拠にはとぼしい。象形でも所詮、後世の付会とすれば、現代人がそれこそ考古学資料をもとに付会しても、郭沫若が彼の時代に付会しても同じにはならないか。いやそれ以上の場合もあるかもしれない。そうだとすると似ている似ていないという象形は主観にすぎない。また、万華鏡的な複数の象形解釈の方が、深層心理からくると考えられる字の成立根拠と合致するのではないのか。答えは一つと考える方が象形解釈にとってはむしろ不自然といえないだろうか。まあそんな話で手前味噌だが、「縄文人の能舞台」という本をお薦めしたい。古さを尊ぶ象形による付会ならたとえ最初は、日本の話であっても、考古学手法の導入がなにより欠かせないということがわかってもらえるのではなかろうか。 いわゆる白川三字書の幕開けを告げた『字統』が出版されたのは1984年。20年のときを経た2004年、新訂版として出版されたのが、『新訂 字統』である。 今回は、文字資料も細分化され、読者により便利なものとなるよう工夫が施されている。また、本文を全面的に加筆修正し、見出し文字も200字追加、著者の20年間の研究成果も適切に反映されている。 単なる「引く辞書」を越え、「読む字書」として生まれた基本的な性格を一層洗練した新訂版は、旧版の読者にも、これから漢字の世界に臨む初学者にも有益な一冊だ。 新訂 字統を楽天で検索 |