iPS細胞 世紀の発見が医療を変える (平凡社新書) |
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iPS細胞の前に研究されていたES細胞は、iPS細胞とまったく同じ働きをするが、人間の胚を使うため、倫理的な問題があった。確かに、胚はそのままにしておけば人間の赤ちゃんになるので、殺人と言えなくもない。しかし、私はそれには問題がないと思う。これから生まれてくる赤ん坊の胚を使ったのなら問題があるが、この本によれば、使ったのは不要で、そのままだと廃棄されてしまうものである。私たちは生命あるものを殺さねば生きていけないようになっている。そういう意味では、みんなが罪を背負っており、このような問題について完全に「反対」と言えるはずがない。ES細胞が病気や事故に遭った人を救えるなら、研究を進めるべきだ。その点、iPS細胞は倫理的に問題なく、実用化が待たれる。 ひとつ気になったのが、ES細胞研究をする科学者はより高い倫理性を持たねばならないという記述である。しかし、これは科学の本質を誤って捉えている。科学者を外部から倫理的に規制するのは可能だ。しかし、科学者自身にそれを持てと言うのは無理である。科学とは、下り坂を転がるボールのように、時が経てば経つほどより勢いを増し、ひとつの方向に向かって発展していくものだからだ。科学者は、自分ではその勢いを止めることはできない。マンハッタン計画がいい例である。計画のリーダーだったオッペンハイマーは原爆を創り出し、その後でその脅威を悟り、核反対論者になった。科学はブレーキの壊れた車のようなものだ。強制的に止めなければ、とんでもない方向に進む恐れがある。私たちは常にそのことを肝に銘じておくべきだ。 そのあたり、山中教授の作ったiPS細胞は倫理的にも大丈夫であり、悪用される危険もなさそうだ。ぜひ日本人の手で実用化してほしいものである。 「iPS細胞」とは最近耳にすることが多くなったトレンディーな言葉です。 つい最近も新聞紙上で女子大生がクローンマウスをつくったということが掲載されていました。 本書は羊のクローン化が成功したES細胞に関する仕組みの説明から始まり、iPS細胞の誕生からその仕組みを専門的な見地に立脚して説明してあります。 一般の方々が読める程度に仕上げているとのことですが、未来への希望をもたらす最先端研究であり、すべての仕組みを十分理解するにはギリギリのところがあると思います。 とにかく説明の前後を忘れないうちに一気に読み上げることと、何度も読み返すことで理解は深まると思います。 「いのちの仕組み」について、かなり突っ込んだところまで書かれており、実に神秘的な世界が繰り広がっていきます。 現在、医療はある意味対症療法しかないですが、近い将来には再生医療といった”造る医療”の形に変わってくるというのが感じられます。 大学では生命科学系の学科が急増しており、今後ますます発展していく分野であると思います。 著者はこの最前線医学を研究している過程で、本題以外に生命倫理から国の支援状況に至るまで情熱的に伝えると共に多くの読者にこの研究に対して関心を抱いてもらうよう働きかけています。 人工多能性幹細胞(iPS細胞)について紹介した本。大学院の博士課程という、まさに研究の現場にいる人が書いている。博士課程の院生は専門性を一番深めている時期。このように一般向けに平易に語ることができるのは、素晴らしい能力だ。また、日々の研究に追われるなかでの執筆と思われ、驚きである。 本書は、説明しようとする著者の心遣いが随所にうかがわれる。筆致は懇切丁寧である。SFであったり、絵画であったりという様々な例をさかんに出して説明している。iPS細胞があればES細胞はいらないという見解は誤解である、など予想される誤解も解こうと努めている。 専門用語を使わずに説明しよう、という配慮のもとで書かれている。遺伝子工学も記号の多い学問であるが、本書にはほとんど登場しない。山中ファクターの四つの遺伝子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)くらいは、記念にでも挙げておいたほうがよかったかもしれない。 本書は総じて丁寧に解説された本であり、iPS細胞を知りたい人には勧めることができる。しかし、本書にはやや「若書き」とでも言えるようなところがみられる。 まず、iPS細胞についての本としながら、iPS細胞の解説が登場するのは130ページ以上経った後である。これはiPS細胞というものの性質による。iPS細胞研究はES細胞の性質を体細胞に持たせよう、ということであるから、まずES細胞の説明が必要だ。ということで本書はES細胞の解説から始まり、一般的な発生の話、など経てようやくiPS細胞に到達する。教科書的な記述としてはもちろんこの順序となるだろう。しかし一般読者としてはiPS細胞にたどり着く前に飽きてしまうかもしれない。iPS細胞の本、というよりは幹細胞研究の本、と捉えたほうがよいか。 さらに、筆致が丁寧ながら淡白である。iPS細胞の発見が与えた社会的インパクトや、あるいは研究者の持つ情熱はあまり伝わらない。むしろ意図的に熱を排除しているようにも思われる。このあたりは科学ジャーナリストに任せるべきであろうか。 最後に、最終章について。ここではSFを援用しつつ、著者の科学観について語られている。何らかのビジョンを語りたいのだろう。しかし専門外であるからか、それまでに比べれば議論はかなり未熟である。この章は無くてもよかっただろう。 本書を通読して、驚きを覚える。それは、そもそも一般向けに積極的に語ろうとする強い心意気を持つということに対する驚きである。幹細胞研究のこれからの発展をこのような人が担うのだと考えると、頼もしい思いがする。今後が楽しみである。 とても丁寧に、自分のようなまったくの素人にも分かるように書かれています。 もちろん最先端医療に関する高度な内容を対象にしているので難しい部分もあります(と自分は思った)。 それでも一般の人がたまにニュースや新聞で見かける言葉「ES細胞」や「iPS細胞」という言葉にひっかかりを持つための足がかりとして読んでおくといい本だと思います。 筒井康隆さん推薦らしいですが、なるほど小説の素材としても想像力が膨らむ話なのかもしれませんね。 個人的にはこんな若い著者がこれだけ魅力的な文章を書けるということに驚きました。 かなりの読書(SF小説?!)好きの人なんでしょうね。 あと、嘉美(よしみ)さん、男性です。 著者は大学院博士課程の方です。大学院生の方は、ご自身も研究内容の理解を進めて、説明する機会も多いのでしょうか、とても丁寧に判りやすくお書きになられていて、ips細胞とは何であるか理解が進みました。ips細胞を知るためには、ES細胞を基礎知識に入れておく必要があり、そういった素人でもついていけるように予備知識も含めて解説してくれていますのが好感を持ちました。章毎にまとめもつけてくれています。さすがは、大学院生。親切だと思いました。 iPS細胞 世紀の発見が医療を変える (平凡社新書)を楽天で検索 |