誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか |
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著者は、未来の報酬の心理的な割引は、 合理的な指数関数ではなく、双曲線型であるという、 ハーバードにいた心理学者ハーンスタインの 仮説を研究してきた。 この事実はいまでは実験経済学の中で広く知られていて、 最近でも阪大のCOE研究でも使われているほどである。 双曲割引では、異時点間の選好に矛盾が生じる結果、 ダイエット中なのに、つい食べてしまう、とか 禁煙したいのにできない、とかいうような人間的、 あるいは日常的な悩みを説明できるのである。 これはすでに行動経済学のすべての教科書に書いてあるので、 詳しくはそちらを読むのがいいだろう。 本書は教科書に比べて、あまりにも話題が散発的で、 あまりまとまっていないため、エッセイというべきだからである。 著者は第一人者であるため、 私は双曲割引の基礎となる神経科学的な基盤について 示唆しているのではないかと期待して読んだが、 それは全くなくて、 過去の人間の知見と双曲割引仮説がいかに整合するかに の説明に終始しているのは残念である。 訳者の解説が長く本論をかみ砕いて解説しているために、意志という掴みづらい事柄にもかかわらず、どんな人でも面白く読めるのではないでしょうか。癖や痛みにまで言及しないほうがわかりやすくてよかったと思いますが、人文科学を研究している人にはぜひ読んでいただくといいかと思われる一冊です。 ヒトのもつ限定的合理性に関し、友野典男は「行動経済学」の中で、網羅的、横断的に 様々な議論を紹介している。その中で双曲割引は少々批判的な紹介に留まる。しかしエ インズリーはまったく逆に、双曲割引ひとつでどこまで行けるか、やってみようじゃな いのというアプローチをとっている。その辺は、学問の領域に目配せしなきゃいけない 経済学者と臨床的に使えるものは使っちまえという精神科医との差なのかもしれない。 エインズリーは驚くべきことに、意志の発生すら双曲割引との関連から説明してしまう のだ。さらに意志の持つデメリット(満足度を減らす場合等)まで検討している。 しかし、本書はプロットも一本槍で筋が通って読みやすいのかといえば、さにあらず。 訳者も述べるように、枝葉が伸びすぎ(枝葉も面白い話が多いのだが)、いったい自分 は何を読んでいるのか、著者に置いてけぼりにされるような箇所が少なくない。 また最初に訳者解説を読むべきかどうか判断に迷う(私は最初に読んでしまった)。な ぜなら第10章にあるように、それは報酬消費のピークにはやく到達しようとする「い けてない」拙速な行為だからである。(逆にいえば、本書の読みにくさは、読者の満足 を最大化するために最適化されたプロットなんだろうか。なんて考えたが、多分それは 考え過ぎ。)しかし普通の読者であれば問題は無さそうである。双曲割引という概念に 初めて触れる場合や、本書の押さえるべき主脈は何かについて水先案内を受けたい場合 は、むしろ先に読んでおいた方が、適当だろう。 人がなぜ矛盾をはらんだ行動をしてしまうかを双曲割引の理論でもって説明している。理論は完璧のような気がするが、その著者の言っている双曲割引の信憑性を裏付けるデータがほしかった。というのも、矛盾した存在である人間の愚行は特にこれだけのページを読むまでもなく一般人にも周知の事実すぎて、あまりにもあたりまえのこと読まされすぎた感があったからだ。しかし、この理論から、さまざまな可能性を予見させる考え方は大変おもしろく、一般的な読み物として結構おもしろいと思う。それから、訳者の山形氏は訳者としてすごいのかでネットの自由は進化するを読んでも感じたが、文章が大変ポップな感じがして、こういう分野の本を読むのに肩がこらずによめる感じもとてもいい。本論を読む前に、訳者の解説を読んでから読むこともお勧めする。 誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのかを楽天で検索 |