産業遺産とまちづくり |
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新たなものを作って便利にする、または観光施設を持ってくることによって街づくりをするという発想ではない点に好感が持てる。 産業遺産といっても、建物と一部窯といった町並みから見えるものに限定されている。産業遺産には、織物の機械やタービンといった生産のための道具も含まれるし、ダムといった大規模ではあるが日と目に付きにくいところにあるものも含まれるが、この本では建物に限定されているといってよい。 せっかくなのだから、こういったものも含めたまちづくりがあってもいいのではないかと思う。 動態保存というのは日本では比較的新しい考え方だが、町並みなどを保存していく動きが地域で活発化されていく中で今注目を浴びている。本書でも廃坑になった鉱山や関連施設を博物館やアートスペースで残す試み、現役を引退した青函連絡船の再利用、あるいは大谷石の採掘跡の巨大な空洞を転用したり煉瓦造りの倉庫を芸術家に貸し出したり、舞台にするといったケースなどで取りあげられている。中には瀬戸の窯垣のように存在そのものの価値が見直されものもある。いずれも面白い取り組みばかりだ。もともと工場や倉庫、あるいは廃坑などといった産業遺産は法律で手厚く守られた京都や奈良などの寺社と違うものだと考えられていたわけだが、最近の古い価値観を再発見していこうという社会の風潮もあわせて考えると正直、我々の身近にあった素晴らしいものはもっと大事にされるべきだと思わざるを得ない。本書の扱っているテーマは学究的なものだが、この手の本には珍しく美しい写真が多用されている。また読み手の興味と好奇心を巧みに引き出すような書きぶりにも好感が持てる。産業遺産といっても大げさに考えなければそういったものは人が住み暮らしがあったところには何らかの形で残っているものだ。巻末には郵便局、学校、橋、用水路、運河など都市部でなくても身近にある産業遺産が列挙されている。日本のあちこちで生活の匂いが残り、時代の名残を伝える産業遺産を残していこうという動きが広まれば、5年後、10年後には心のゆとりや生き甲斐を感じることのできるまちがもっと増えているかも知れない。 産業遺産とまちづくりを楽天で検索 |