素朴だけでない田舎暮らしの馴染み方 |
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本著のあとがきに出版の動機になったことが次のように書かれている。 「・・・30年の信州生活で、現代日本に秘境などどこにもないと確信した。かれらが「秘境」と呼んだところには昔から人々の生活があり、今も当たり前のように生活が行われているのである。また、田舎といえども「生活」の場である。当然のことだが「素朴」な人間関係だけではありえず、さまざまな矛盾が行き交い、ぶつかり合っている。都会も田舎もないのである。そのすべてを丸ごとすくい上げた「地域」の有り様、暮らし振りが書けるのなら、本にする意義がわずかばかり残っているような気がしてきたのである」 正直なところ著書の「田舎暮らしの馴染み方」という題名から気楽に読み始めた。しばらく読み進めるうちに題名との違和感を覚えた。ある種の文明論的な内容でもあるのだ。 時には映画「三丁目の夕日」が田舎から都会に出た少女の物語なら、逆に都会から田舎に移り住んだ戸惑いの物語でもあるように感じた。 田舎に育ち田舎に住む身からすると田舎の良さといやらしさが実によく描かれていると思う。 田舎はよさであると同時に、自我を鎮めないと生きにくく、軋轢をうむ。 田舎人の人の良さとは、田舎の暗黙の共同体のおきてを受け入れた場合であって、おきてにそぐわない自我の主張はよそ者排除の論理にさらされる。 さすがに長い田舎住まいの経験が見事にそこを描いている。 じっくり読みこなすことで、田舎暮らしのユートピアを勝手に頭に描いている 団塊のおじさんたちに貴重な情報をもたらしてくれるだろう。お勧めしたい。類書にない田舎暮らし成功の鍵が詰まっている。 作品のタイトルは田舎暮らし‥となっているが、 本書の本当のテーマは、地域文化であると感じた。 特に印象に残ったのは、2点。一つは、速度という切り口での生活圏、経済圏の分析。もう一つは、大企業主義でないプロ意識の本質とは何かである。 人間の移動手段は、徒歩から自動車へと進化してきた。 それに伴い、人間の生活圏は、徒歩で往復できる距離から、自動車で日帰りできる距離へと拡張することになる。まさにその事が地域社会における、過疎と集中を生み出したという事を、著者の実体験から物語的に見せてくれている。 また、著者は白馬国際映画祭のプロデューサーとして活躍された方のようで、地方都市でありながら、いかにして世界的な映画祭を成功させたかの 舞台裏が語られている。そこで、世界一流と呼ばれる人との接点を通じ、著者が感じたプロ意識とは一体なんなのかを、さりげなく語っている。 最近は、地方と都市の地域格差が問題となっているが、 本書を読むことによって、地方に住んでいる人、これから地方に住みたいと思っている人が、プロ意識を持った田舎人になるための一つの指針になると思う。 素朴だけでない田舎暮らしの馴染み方を楽天で検索 |