ショック!残酷!切株映画の世界 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝) (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)

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価格:¥ 1,365(税込)
洋泉社  (2008-02-21)
/高橋 ヨシキ/ DEVILPRESS MURDER TEAM/
単行本(ソフトカバー) 262ページ
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 スプラッター映画に特徴的に見られる「人体破壊描写」に焦点をしぼり、いわゆるスプラッター以外の映画(ヒッチコックやスピルバーグ、やくざ映画や「犬神家の一族」)まで論及の幅を広げた点が新しい(もっとも、クローネンバーグ「クラッシュ」を論じた柳下毅一郎の文章は、それ自体は興味深いが、この企画の中では浮いている)。
 とはいえ中心はやはり1970、80年代のスプラッター黄金期の作品(「ハロウィン」「サスペリア」「13日の金曜日」「死霊のはらわた」など)で、その周辺とその後、という構成になっている。「ソウ」や「ホステル」など、近年のこのジャンルの復興ぶりが、いま改めてスプラッターを、というこの企画の刺激になっているのだろう。同時代にスプラッターを見まくった人間としては、懐かしく、また勉強(?)になる。たとえば、ラリー・コーエン(「悪魔の赤ちゃん」)あたりまでをNY派でくくったところなど。
 70年代、80年代以降に物心ついた若い筆者が多いためか、年寄りからみると時代認識にひっかかる部分もある。たとえば「(60年代後半から)リベラル派といわれる新勢力が台頭し、古き良きアメリカを堅持する保守派勢力と激しい文化闘争を繰り広げていた」(p76)といった部分。リベラル派は60年代後半に生まれたわけではないし、また、この時代は東西冷戦が背景としてむしろ重要だろう。左翼のほうが、たとえば「狼よさらば」や「ダーティ・ハリー」の暴力表現を「右翼的」と批判した事実もある。
 9・11と最近のホラーを結びつけるのもこじつけくさい。
 とはいえ――もったいをつけた「映画史」的部分はともかく――スプラッター映画がそうであるように、本書もただ楽しめればよいわけだ。私は十分楽しく読めた。
「映画秘宝」の創業者(笑)町山智浩は『映画宝島vol2 怪獣学入門』の編集後記でその当時(1992年)の映画雑誌に関してこう嘆いている。
「怪獣に限らず、徹底的に映画を解読してみせる評論って、最近あまり流行んないみたいですね。他の映画雑誌はみんなオシャレでビジュアル重視ですから。でも、このままじゃ、4百字で60枚以上の筋の通った論文の書ける映画評論家なんて、滅んじゃうんじゃないでしょうか(読んでもワケわかんないムツカシイ雑誌はあるけど)」

さて今回の別冊映画秘宝『切株映画の世界』はとにかく「切株=人体破壊描写」をキーワードに主要監督やジャンル別に各執筆者がおもいっきり持てる知識と思い入れ、それからたぶん鬱憤をこめた読み応え充分の本となっていて、映画秘宝のなにふさわしい出来である。充分小汚いしね。
巻頭の切株派宣言!から切株派リーダーの一人高橋ヨシキの「残酷!野蛮!何より娯楽!切株映画は悪夢のワンダーランド」の流れは『ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進』以来の熱気と胡散臭さ満載でもうたまらんです。でもって、その秘宝魂は巻末の田野辺尚人の編集後記と予告まで満ち溢れていて、たぶんこりゃ予定通りは出ないだろうななんていう妙な安心感(?)も醸し出していたりもする(事実続編の発売時期が後記と予告でずれているんだもん)。

ちなみに続編のタイトルは『切株映画の逆襲』で町山編集のベストセラー『トンデモ本の世界』と『〜逆襲』を踏襲していて(『トンデモ本の世界』が出た時は編集者はまさかこんな本が売れるとは思わず非常に初刷が低く見積もられたというのは有名な話だが)、今春あたりには「切株」が流行語どころか日常語として定着しているかも。

あ、そういえば不思議なことに町山師父もそうなんだけど、「切株派」の提唱者の一人である中原昌也さんも原稿かいてないんだよね。
「切株」とは、映画で人体が破壊・切断される描写を指す。
「切株派」それは、映画を観る悦びの半分ぐらいは、切株表現にあると信じる人たちの集まり。
(以上、本書からの引用)
待望の“切株派”書籍が、遂に刊行。
期待を上回るほどの充実ぶりである。ホラー映画に限らず、あらゆる映画の切株表現をカバーしている。『13日の金曜日』『死霊のしたたり』から、ジョン・カーペンター、ダリオ・アルジェント、ジョン・ウォーターズ、SOMETHING WEIRD VIDEO、ジャーロ、70年代横溝映画、『子連れ狼』、アニメーション、クンフー映画、そして00年代の新世代ホラーの潮流まで、扱われている対象は非常に幅広く、ディープに網羅されている。
とりわけ、切株表現についてブラックユーモア、トレンスグレッション・アート、ショック・ヴァリューといった観点から解説した序文は、広く読まれるべき論考である。
青少年による殺人事件などが起こるたびに残酷表現や犯罪描写のあるカルチャーが安易にスケープゴートにされる風潮に対して、圧倒的に真っ当で正しい反論を提示している。その毅然とした姿勢と理性的な主張には、敬意を表したい。
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