カルラのリスト |
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カルラ・デル・ポンテの活動を通じて、旧ユーゴスラビア紛争の本質を垣間見ることができます。負けた国家はなく、敗者は虐殺された市民という戦争において戦争犯罪を裁くことの空しさを感じさせる映画です。 旧ユーゴスラビア国際刑事法廷の検察官カルラ・デル・ポンテの活動を描いたドキュメンタリー映画です。2005年の7月から12月まで、カメラはカルラを追い続けました。 彼女のリストには、カラジッチ、ムラジッチ(セルビア、スルプスカ共和国)、ゴトヴィナ(クロアチア)達が並びます。カルラの仕事は、普通の検察官のような捜査・訴追・公判ではなく当事国がリストの人物たちの所在を突き止め、ハーグ国際法廷へと引き渡すよう圧力をかけることです。 カルラの武器の一つはEU。クロアチアもセルビアも戦争犯罪人の引渡しがEU加盟の条件とされていました。10月、カルラはクロアチア政府が非常に協力的であることをEUに報告、直後にEU加盟交渉が開始されます。カルラの賭けです。 そして12月、ゴトヴィナがカナリア諸島で拘束されます。賭けに勝ったカルラはスタッフと専用ジェット機内で、シャンパンで乾杯します。 監督マルセル・シュブバッハは「正義の遂行の困難さを伝える」ことがこの映画の目的だと語っています。 国際社会での駆け引きを演じるカルラのタフさは強く感じられました。「正義の人」ぶりはいかんなく発揮されています。国際刑事法廷というほとんどうかがい知ることの出来ない世界を見せてくれたことも賞賛に値します。ゴトヴィナ逮捕もカタルシスを与えてくれます。 でも、一つの警句が付きまとって離れません。「いったいこれはプロパガンダとどこが違うのか?」と。レニ・リーフェンシュタールの『民族の祭典』の再現ではないのか? ゴトヴィナはクロアチア国民にとっては「独立の英雄」です。カラジッチも熱狂的に支持されていました。そういった、カルラの「正義」と反対の見方を取り上げるべきであると言うつもりはありません。 カルラが問題としているのは、「戦争における国家や軍隊の狂気、権力や武力を手にしたときに人間の集団が自らの政治スローガンに酔いしれて行う数々の犯罪」(東澤靖氏の解説より)の部分ですから、反対者の主張が述べられたにしても、それは微動だにしないでしょう。 問題は、シュブバッハ監督とカルラの関係です。監督は、「どんなものであろうと、ドキュメンタリーには常に作家性が現れるものなんだ」と語りますが、映っているもの聞こえてくるものはカルラの主張であり、監督はカルラと同一化してしまっているのではないかという詰まらなさを感じます。 最も心に残ったシーンは、カルラが煙草を美味しそうに吸う場面です。カルラは言います。 「吸ってるところは撮らないで」 唯一、作家性が感じられた場面です。 カルラのリストを楽天で検索 |